
– Senate House
先日の大学学部選択の記事でロンドン大学 (University of London)のカレッジを選んだと書きましたが、誤解を招きやすいその仕組みを説明します。
ロンドン大学は大学連合で、ロンドン大学という一つの大学はありません。「ロンドン大学連合」と捉えると以下の内容が分かりやすいかもしれません。
ロンドン大学の傘下に、17の独立したCollegesと10の小規模な専門研究所のInstitutionsがあります。
17のCollegesは以下の通りです。
- Birkbeck, University of London**
- Courtauld Institute of Art
- Goldsmith, University of London***
- Heythrop College**
- The Institute of Cancer Research*
- King’s College London***
- London Business School*/**
- The London School of Economics and Political Science (LSE)***
- London School of Hygiene & Tropical Medicine*/**
- Queen Mary University of London***
- Royal Academy of Music**
- The Royal Central School of Speech and Drama
- Royal Holloway, University of London
- The Royal Veterinary College**
- St George’s, University of London***
- SOAS, University of London (School of Oriental and African Studies)***
- UCL (University College London)***
10のInstitutesは、以下の2つの機関があり、School of Advanced Studyが9つのInstitutesを包括しています。
I. University of London Institute in Paris
II. School of Advanced Study*
i. Institute of Advanced Legal Studies
ii. Institute of Classical Studies
iii. Institute of Commonwealth Studies
iv. Institute of English Studies
v. Institute of Historical Research
vi. Institute of Latin American Studies
vii. Institute of Modern Languages Research
viii. Institute of Philosophy
ix. The Warburg Institute
また、通信教育でロンドン大学の学位取得を目指すプログラムもあります。
- University of London International Programmes (Distance Learning)
* 学部教育の無い、大学院大学
5. The Institute of Cancer Research
7. London Business School
9. London School of Hygiene & Tropical Medicine
II. School of Advanced Study
** 独自のカレッジの学位称号権がありながらもロンドン大学の学位を称号
1. Birkbeck, University of London
4. Heythrop College
7. London Business School
9. London School of Hygiene & Tropical Medicine
11. Royal Academy of Music
14. The Royal Veterinary College
*** ロンドン大学ではない独自の学位を称号
3. Goldsmith, University of London
6. King’s College London
8. The London School of Economics and Political Science (LSE)
10. Queen Mary University of London
15. St George’s, University of London
16. SOAS, University of London (School of Oriental and African Studies)
17. UCL (University College London)
その他ロンドン大学所属Colleges/Institutionsは独自の学位称号権がなくロンドン大学の学位を称号
2. Courtauld Institute of Art
5. The Institute of Cancer Research
12. The Royal Central School of Speech and Drama
13. Royal Holloway, University of London
I. University of London Institute in Paris
II. School of Advanced Study
名称は和訳すると混乱しやすいので、CollegeやSchool、Institute、Academyは英語のまま捉えるといいでしょう。
また上記の他に、The Royal Academy of Dramatic Art (RADA)は、King’s College Londonの学位が称号されます。もともとはロンドン大学の学位を称号していたようですが、King’s College Londonが独自の学位を称号するのと伴って変更されたようです。
ちなみに、King’s College LondonはKing’sと省略して呼ぶことが多いように感じます。
King’s Collegeというと、University of Cambridgeの一カレッジを指すことが多いです。
Oxbridge (University of Oxford and University of Cambridge)のカレッジ制度はロンドン大学の制度とは違うことに注意が必要です。英国にはこの二大学の他に、Durham Universityも同様の制度を(真似して)とっています。
学位称号権の有無と、どの学位を称号するかは非常に重要なことです。
英国の高等教育機関は、枢密院(Privy Council)で承認を得ることで学位称号権を得ることができます。
例えば、独自の学位称号権がありながらもロンドン大学の学位を称号する、Birkbeck, University of LondonでBA Englishを学んだ卒業生はCV (履歴書)に、”BA English (University of London)”、若しくは省略して”BA English (London)”と書くことになります。
様式の違いはあれども、学位の名称(BA/BSc等)やコース名(English, Business Studies, Mathematics等)に加え、どこから学位を称号されたかも書くのが基本です。
それによって、学位の質を謳うことができます。何をどこで学んだかという事実は非常に重要です。
これが独自の学位を称号する、King’s College LondonでBSc Nutritionを学んだ卒業生はCVに、”BSc Nutrition (King’s College London)”、若しくは”BSc Nutrition (KCL)”と書くこととなり、ロンドン大学の名称は書きません。
Birkbeck, University of Londonは、現段階では質の高いロンドン大学の学位を称号しながらも、独自の学位称号権を持つ方針は将来への保険と発表しています。
“Although we do not currently exercise our own degree awarding powers, having them is an important insurance policy for the future and a means of confirming our position as a nationally regarded higher education institution.”
(Degree-awarding powers: http://www.bbk.ac.uk/about-us/governance/degree-awarding)
2007年に創立100周年を記念する形で、Imperial College London (正式名称: The Imperial College of Science, Technology and Medicine)はロンドン大学から独立し、ロンドン大学崩壊の危機と危ぶまれました。
また、旧Institute of Educationは2014年12月にUCLに合併されました。UCLは元より、The School of Pharmacy, University of Londonや、School of Slavonic and East European Studies (SSEES)に加え、The Eastman Dental Institute等を合併し、英国でも大規模な大学の一つです。
なお、UCL School of Slavonic and East European Studies (SSEES)はKing’s College Londonの一学部として1915年に設立され、1932年に独立しロンドン大学の一カレッジとなった後、1999年にUCL (University College London)に合併された経緯があります。
2016年8月よりCity University Londonが独自の学位称号権を保ちながらロンドン大学へ一カレッジとして新たに加わります。
Heythrop Collegeは2018年以降、ロンドン大学のカレッジとしての地位を失い、新たな運営方針に切り替わります。神学部という特殊な学問のため、経営や学生の募集の面で問題が多いゆえの決断のようです。
コースによっては、2つ以上のカレッジの組み合わせによる学位取得を目指すものもあります。
これもロンドン大学連合の利点の一つでしょう。
例: Intercollegiate courses at SOAS, University of London
http://www.soas.ac.uk/enrolment/intercollegiate/
ロンドン大学を取り巻く状況も刻々と変化し続けていながらも、様々の研究を率いる国際的に有名なカレッジの多い大学連合です。
大学ランキングではそれぞれのカレッジが独立した大学として掲載されていますし、ロンドン大学連合の学生という考えはありません。名称に”University of London”が付くか否かも、そのカレッジが独自の地位を築いているか、ロンドン大学連合との関係性等を表しています。
UCLやKing’s College London、LSE等は公式サイトでUniversity of Londonの所属カレッジとは一切触れていません。
唯一、図書館のページで他のロンドン大学の学生と教員の利用を案内している程度です。
対して、SOAS, University of LondonやQueen Mary University of London等、名称からもロンドン大学との関係が見てわかるカレッジもあり、そこが独立したカレッジとしての特性を明確に表しているのだと思います。
以前にも書きましたが、かつては一都市につき一大学のみが学位を称号できる権利を得られたため、London Universityとして設立されたUCLとKing’s College LondonがUniversity of Londonという一つの大学の所属カレッジとして存続することとなった経緯があります。
特定の分野の研究が進んでいるカレッジがロンドン大学には多く、英国をはじめ、世界中の博物館・美術館のダイレクター/Directorsは美術史の研究で有名なCourtauld Institute of Art出身者が多いです。
いわばその道での登竜門で、例えば、大英博物館の元Director、Neil MacGregor, OMやNational Galleryの現Director、Gabriele FinaldiやTateのSir Nicholas Serotaの他にも、現職・前職を合わせると相当数の著名な出身者がいます。
SOAS, University of London (School of Oriental and African Studies)はその名の通り東洋とアフリカ、中東の地域研究に長けています。
成り立ちとして、他のヨーロッパの地域研究を率る大学(パリのL’Institut national des langues et civilisations orientales (INALCO)等)に対抗する形で設立され、戦時中は大英帝国の植民地のスパイ養成等にも関わった経緯があります。
2016年に創立100周年を迎え、現在2つあるキャンパスを統合し、Bloomsbury地区にあるロンドン大学本部のSenate House North Blockを改装し夏以降利用が始まる等、更なる発展が期待できる大学の一つです。
複数の独立したカレッジが今なおロンドン大学として連合を維持しているのは、主に財政面と学術資料の共有の利点で、学生はロンドン大学連合の図書館、Senate House Libraryや所属カレッジ以外のカレッジの図書館も利用できます。
他にも、Student Central (旧: ULU/University of London Union)といった共有施設もあります。
この利点を得るために、Sonthéはファウンデーションコースと大学学部をロンドン大学のカレッジから選びました。
Senate House Libraryと所属大学の図書館には専攻科目の資料が質・量ともに高い水準で揃っていて非常に満足しています。
とはいえ、ロンドン大学だから選んだというわけではありません。希望する学問の研究が進んでいて、それを率いる教員がいる大学を選び、それが自ずとロンドン大学のカレッジだったまでです。これは言わずもがな、すべての学問に共通するわけでは全くありませんので、あくまでも一例です。
ということで、ロンドン大学という一つの大学はなく、ロンドン大学の学生・卒業生という見方はありません。
規模や運営方針、施設等、何もかもがカレッジごとに違いますので、ロンドン大学という括りで大学を見るのは誤りですが、その違いを見るのも面白いかもしれません。
何はともあれ、今後のロンドン大学の変化に注目です。
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