
– 散歩が心地よい春がようやくやってきました
(以下は法制度についての一個人の考察であり、関連する特定の内容を支持するものではありません)
日本国籍を保持している成人が英国へ移住し、英国に制限なく外国籍として(比較的)自由に生活できるILR (Indefinite Leave to Remain)を取得後、英国籍を取得した際どうなるかの考察です。
ILRは保有者本人が生存している間のみ有効な、ある意味では期間が限定されている権利のため、他国にあるような永住権 (Permanent Residence)とは違い、英国には永住するという概念がないようです。
日本の国籍法によると、日本国籍を持って生まれた成人は自分の意思によって他国籍を取得すると日本国籍を失うとのことです。
婚姻等の他国籍取得方法や未成年は条件が異なるため、今回は省きます。
(国籍の喪失)
第十一条 日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日
本の国籍を失う。
2 外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選
択したときは、日本の国籍を失う。
(法務省:国籍法 – http://www.moj.go.jp/MINJI/kokusekiho.html)
一方、英国籍を保有している方は他国籍を取得、保有することは全く問題ありません。
Dual citizenship (also known as dual nationality) is allowed in the UK.
(GOV.UK Dual citizenship – https://www.gov.uk/dual-citizenship)
実際、Sonthéの周りにも英国籍とその他国籍、多いのはアメリカ合衆国やフランスですが親世代以上がフランスに移住した後にフランス国籍を取得した場合、3つ以上の国籍、つまり多重国籍も非常に多いです。
また、納税等の利便性を理由に、複数ある国籍の一つを放棄した方や検討している方もいます。
国籍はその方のアイデンティティでもありますが、生活の利便性を理由に変更が可能な権利ですので、「国籍がないから〇〇人でなくなる」というような浅はかな差別的考えは少なくとも英国にはありません。
無駄な問題を避けるために定住する地の国籍を取得することは至極当然のことです。
英国のILRについて、Sonthéは仕事で関連することを扱うこともあるので若干の知識がありますが、以前はパスポートにシールが貼られ、それ自体がILRとなっていました。
もしくは単純にパスポートにスタンプが押されるだけの時期も十数年前まではありました。
他にも別冊の紙の証明書を保有している方もいます。
どのような経緯でILRを取得したかによって様々な種類がありますが、全て同等の権利です。
EC Regulation (EU: European Commission / 欧州委員会、Regulation: 規則)によりEU加盟国は半年以上の滞在者に条件を満たす在住許可証を発行するようになりました。
英国では2015年6月よりBRP (Biometric Residence Permit)というカード型のビザが導入され、英国外でビザ申請された場合、申請者のパスポートにはVignetteという30日間有効な一時的な入国許可証が貼られ、英国入国後10日以内ににBRPを指定の郵便局か教育機関で受け取るようになりました。
ちなみに、英国入国から10日以内に郵便局へBRPが届いていないこともよくあることのようです。
英国の郵便事情や行政の手続きの時間がかかることにいちいち驚いていては生きていけません。
最終的にBRPを受け取ることができれば問題ありません。
ということは、入国後10日以内というのは目安にすぎないのかもしれません。
現在では英国の市民権(英国籍)を得る際に、BRPを返却することが義務となっています。
仮定として、日本政府には英国籍を取得したことが知られないため、日本国籍を失いようがありません。
しかし、日本のパスポートには期限の切れた無効のVignetteしかなく、これはビザではありません。
すると失っているBRP型のILRを提示できないため日本国籍での英国の滞在資格が確認できません。
例えば、在英日本国大使館に相続等の手続きで訪れた際、英国滞在資格を聞かれるでしょうから、英国籍があると申告すると日本国籍を放棄するよう伝えられるはずです。
それなら手続きは日本で行えばいいかと思うかもしれませんが、日本のパスポートを更新する際に「現在外国の籍を有していますか」という質問にどう答えるのでしょうか。
虚偽の申告をしてパスポートを取得すると旅券法と刑法による処罰の対象となります。
日本に住む気がないのに日本国籍を維持する理由が見当たらないのですが、感情論以外に明確な理由はあるのでしょうか。
当然、英国籍保有者として英国に滞在すると、その後は日本国籍保有者としてILRを再取得することは不可能です。
またILRを保有している外国籍の方が2年以上英国を離れると権利を失います。
ILRを取得するのは近年より困難になっているようですから、英国に住まなくなった際にその権利を失わないように英国籍を取得することもか考えられます。
もちろん、両国籍を保有し続けたい気持ちもわかります。
日本に将来無条件で戻れる保険として日本国籍ほど安心感を与えてくれるものはありません。
長年住んだ英国を離れて日本に戻ることが幸せかは分かりかねますが、観光だとしても外国籍として日本に入国して指紋を取られたくないという意見もあるでしょう。
実際に処罰された方がいるかは分かりませんが、異なる2国の法律を把握し義務を遂行するのは必須です。
日本国籍法が今後数年以内に改定されるとも思えませんので、日本国籍を保有し続けるのは困難でしょう。
英国籍は2重国籍を容認しているため、非常に自由度が高いです。